現在使用している変数はおよそ70です。およそ70の要素で初回視聴率を予測しています。ここでは、中でもとりわけ重要な変数群を説明します。(変数は予測の核心なので、全ては掲載しません)
① 放送枠
② アンケート結果
③ 前環境
① 放送枠
放送枠には枠固有の力があります。私の推測では、
・放送枠の固定客及び歴史(対視聴者、対制作スタッフに対する)
・裏番組、前番組の強弱
・放送局の力の入れ具合(=宣伝力、予算規模、キャスティング)
あたりが総合されて、枠の持つ力になっていると考えています。
枠の力は、恐らく皆さんが考えているよりもかなり強いです。
20013年以降の民放ゴールデン帯(+テレビ朝日金曜ナイトドラマ)の初回視聴率に関する枠毎のスコアは下記の通りです。(2016年1月時点)
偏相関係数:0.69
t値 :11.4
P値 :6.79E-22
- テレビ朝日金曜ナイトドラマはテレビ朝日金曜11時と表記
- 日本テレビ日曜10時30分を10時と表記
| |
カテゴリースコア | |
枠.TBS火曜10時 | -2.4 |
枠.TBS金曜10時 | -1.1 |
枠.TBS月曜8時 | -1.6 |
枠.TBS日曜9時 | +2.7 |
枠.TBS木曜9時 | -2.1 |
枠.テレビ朝日金曜11時 | -2.1 |
枠.テレビ朝日水曜9時 | +1.0 |
枠.テレビ朝日木曜8時 | +0.6 |
枠.テレビ朝日木曜9時 | +2.0 |
枠.テレビ東京金曜8時 | +0.3 |
枠.フジテレビ火曜10時 | +0.1 |
枠.フジテレビ火曜9時 | +0.5 |
枠.フジテレビ金曜8時 | -1.4 |
枠.フジテレビ月曜9時 | +1.4 |
枠.フジテレビ水曜10時 | -0.9 |
枠.フジテレビ木曜10時 | -0.9 |
枠.日本テレビ水曜10時 | +0.7 |
枠.日本テレビ土曜9時 | +0.1 |
枠.日本テレビ日曜10時 | +0.1 |
予測手法でも解説している通り、基本的には数量化Ⅰ類にて予測をしていますので、基本的な式は下記になります。
初回視聴率予測値(Y)=(純値)x1+(放送枠ポイント)x2+(前枠ポイント)x3+・・・・xn
この式のx2が上記図の右側、カテゴリースコアポイントです。
全く同じ番組を全く同じ時期に放送した場合、
フジテレビ月曜9時で放送した場合は11.4%に、
日本テレビ土曜9時で放送した場合は10.1%に、
テレビ朝日金曜11時で放送した場合は7.9%になります。
(企画力が10%の番組だとして、それぞれポイントの足し引きをするだけ)
歴史とともに枠は育ちます。いったん育ってしまえば、一定の期間は+ポイントが加算され続けます。ある特定の枠の平均視聴率だけを狙って上げていく(ある枠にのみ力を入れる)、ことを研究するのも良いでしょう。
② アンケート結果
連続ドラマが始まる前に、サンプルサイズ500程度で毎回アンケート調査を実施しています。C〜M3、F3まで階層毎にポイント化し、人口分布割合を乗じて純値を出します。
アンケート結果では、
・ 企画力(タイトル、企画内容、キャストパワー)
が純粋に計れます。
偏相関係数:0.69
t値 :11.3
P値 :9.91E-22
純値分けA.A | -2.22 |
純値分けA.B | -2.39 |
純値分けA.C | -1.59 |
純値分けA.D | -0.45 |
純値分けA.E | +0.49 |
純値分けA.F | +1.01 |
純値分けA.G | +2.15 |
純値分けA.H | +6.07 |
アンケート結果が悪いA→アンケート結果が良いHの順番です。
全く同じ時期に、全く同じ放送枠で放送した場合、
純値分けAの場合は7.8%に、
純値分けDの場合は9.6%に、
純値分けHの場合は16.1%になります。
アンケートに記載されている情報は、タイトル、キャスト(4名程度)、あらすじ(80文字程度)です。これだけで、AからHまで、およそ8ポイントもの差が生まれます。また、連続ドラマの初回に大きく影響を与える変数で、すぐにテコ入れできるのは企画のみです。(枠を育てたり前番組の視聴率をすぐに上げることは難しい)この辺りも、このサイトが企画調査にこだわる一因でもあります。
③ 前環境
前環境とは、そのドラマの初回放送枠の直前に放送する番組の視聴率のことです。
ビデオリサーチ社による調査
その番組との相関係数 | |
当日のHUT | +0.2 |
直前の番組 | +0.5 |
裏番組 | −0.7 |
と発表されている通り、その番組の視聴率には直前の番組と裏番組の影響がそこそこ〜かなりあります。当たり前の話ですが、直前の番組の視聴率が上がり、裏番組の視聴率が下がれば、その番組の視聴率は上がります。
※ この相関係数は関係性の強さを表すもので、視聴率への影響度を表すものではありません。
では、直前の番組はどの程度その番組に影響を与えるのでしょうか。
偏相関係数:0.68
t値 :11.3
P値 :1.44E-21
※直前に放送する番組が4.0~5.5%の時は「前環境い」として分類している、という意味です。
ミニ枠は除いて考えています。
前環境..い 4.0〜5.5% | -3.6 |
前環境..ろ 5.6〜7.1% | -2.0 |
前環境..は 7.2〜8.7% | -0.1 |
前環境..に 8.8〜10.3% | +0.1 |
前環境..ほ 10.4〜12.0% | +0.1 |
前環境..へ 12.1〜13.7% | +1.1 |
前環境..と 13.8〜15.4% | +2.0 |
前環境..ち 15.5%以上 | +3.9 |
なんとしてでも、前番組に12.1%以上取ってもらいたい!感じです。
このように、視聴率に影響を与える要因(変数)は数多く存在します。
初回視聴率が良くても、実はその番組の力では無い、
悪い視聴率が出ても、実はその番組のせいでは無い、
ことが往々にしてあります。
月9よりいい視聴率を出したからウチの番組の方が良い番組だ、という表現はとてもナンセンスです。また、ある俳優の視聴率が、2年前より下がったから人気が落ちた、という表現も適切ではなく、周囲に存在する影響を差し引いて考える必要があります。ドラマ視聴率自体が昔より下がっていることも、前番組が当時は20%取っていたのに今は8%になっていることが原因で下がっていることもありえるのです。